神経ブロック注射の効果・種類・副作用の危険性について
病気や怪我などによる「痛み」の中には、鎮痛剤などの薬で鎮められないものも多く、日常生活に支障を来すようであれば、ペインクリニック、麻酔科などを受診して「神経ブロック注射」を勧められることがあります。厄介な痛みに対して非常に有効な治療法とされていますが、主な目的は、一時的に痛みを消失させる効果を期待するだけのものではありません。
神経ブロック注射が痛みの原因をある程度特定したり、あくまでも「治癒」を目的として使用されていることは意外と知られていないようです。そこで、その効果や種類、副作用による危険性などについて詳しくご紹介したいと思います。
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目次
神経ブロック注射の効果1・痛みの伝導路を遮断する!
私たちが感じる痛みというのは、体のどこかに発生した「痛み刺激」が神経を伝わり、脳へ伝達されて初めて「痛い」と感じられます。したがって、脳へ繋がる伝導路をどこかで断ち切ってしまえば、たとえ刺激自体は残っていても、痛みを鎮める効果は得られるはずです。
この刺激の伝導路を遮断してしまうことを「神経ブロック」と呼び、局所麻酔薬を中心とした神経ブロック注射による治療が行われています。もちろん、神経を切断するわけではありませんが、神経に直接薬物を注入して麻痺させることにより、刺激の伝導を遮断して痛みを消失させる効果が得られます。その効果が持続する時間は種類によっても異なりますが、数時間程度から数週間に及ぶものまで様々です。
神経ブロック注射の効果2・痛みの原因を特定する!
痛みというのは、あくまでも個人が感じる主観的な表現や訴えですから、様々な検査方法を駆使しても、一切原因が見つからないということも珍しくありません。そういった原因不明の痛みを抱える患者さんにとって、神経ブロック注射は欠かせない存在ともいえます。
例えば、手が痛いと訴える人の場合、関連する手の神経をブロックして効果が得られれば、確かに手に何らかの異常が起きていることがわかります。しかし、神経ブロック注射の効果が得られなかった場合は、手以外の別のところに何らかの異常があると推測することが可能になります。
医師にとって、それだけで明確な診断を下すことはできませんが、少なくとも目には見えない痛みの原因をある程度まで絞ることができる点も、より確実な診断に役立ちます。
神経ブロック注射の効果3・治癒が期待できる!
神経ブロック注射には、「痛みを止める」「交感神経系に作用して緊張を解く」「痛みが強くなる悪循環を解消させる」という3つの作用が期待できます。そして、この作用が密接に関係し合うことで病態を治癒させる効果も望めます。
私たちの体は、痛みがあると交感神経系が緊張して、痛みが出ている部位の血管を収縮させてしまいます。これにより血流が悪くなり、酸素や栄養を含む新鮮な血液が届きにくくなるだけでなく、炭酸ガスなどの老廃物や発痛物質が停滞して組織障害が進行します。そのために痛みがさらに強くなる悪循環に陥りやすく、これを解消させるには神経ブロック注射を用いて交感神経系の緊張を解く必要があります。
そして、痛みを一時的に止めることは組織障害を改善させ、結果として「完全な治癒」へ向かわせることが可能になるのです。他にも、冷え性や麻痺、こわばりなどにも同じような悪循環が起こるため、交感神経系のブロックを行うことで様々な症状の改善に有効とされています。
神経ブロック注射は約100種類もある!
細かく分けると約100種類ほどの方法がありますが、代表的なものは下記の3つです。
・感覚神経ブロック
顔の目や上顎、下顎に枝分かれする「三叉神経」の異常による三叉神経痛の治療などに用いられることで知られています。
・交感神経ブロック
「星状神経節ブロック」が代表的なものです。左右の首の横から注入し、片側半分の頭や顔、首、肩、腕、胸、心臓、肺などを通る大きな血管の交感神経を全てブロックすることが可能となります。したがって、非常に多くの疾患で星状神経節ブロックが用いられています。
・硬膜外ブロック
感覚神経、交感神経、運動神経などを同時にブロックできるもので、脊髄の近くを通る「硬膜外腔」と呼ばれる隙間に局所麻酔薬を注入するという方法です。注入する位置を上下にずらすだけで、首から下の全身に有効とされています。こちらも非常に多くの疾患が対象となります。
◎神経ブロック注射の治療対象となる主な疾患
「帯状疱疹痛」「三叉神経痛」「筋収縮性頭痛」「非定型顔面痛」「五十肩」「腰痛(ぎっくり腰など)」「狭心症」「心筋梗塞」「坐骨神経痛」「パージャー病」「会陰部痛」「悪性腫瘍に伴う疼痛」など。
非定型顔面痛の症状とは?
痛みを伴わない「顔面痙攣」「顔面神経麻痺」「レイノー症候群」「網膜血管閉鎖症」「アレルギー性鼻炎」なども対象になります。
神経ブロック注射の副作用による危険性
注入する際に皮膚の消毒を徹底したり、新しい注射器などを使用することで危険性は少ないといわれています。副作用については、薬の量によってしばらく麻痺が残ることもありますが、時間の経過とともに治るものです。
とはいえ、しびれ、めまい、耳鳴り、意識喪失、昏睡、血圧低下、呼吸停止、心停止などを起こす「局所麻酔中毒症」の可能性はゼロではありませんので、できるだけ熟練した麻酔科医にお願いしたいものですね。
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