寝起きのめまい・吐き気の原因は良性発作性頭位めまい症!
寝起きに「めまい」や「吐き気」を起こす原因として「良性発作性頭位めまい症」という耳の病気が挙げられます。これは、耳の中の内耳に「耳石障害」が起こることで発症するといわれ、グルグルとした「回転性のめまい」とともに「純回旋性の眼振」が見られます。
朝の寝起き、とくに寝床から起き上がる際に発生することが最も多く、その他にも、「寝ようとして横になった時」「寝返りを打った時」「洗濯物を干そうとして上を見上げた瞬間」「洗髪する際に下を向いた瞬間」などに症状が現れるものです。
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めまいが起きる頭の位置を「めまい頭位(とうい)」と呼びますが、いつも決まった頭位になると起こるという特徴のある病気です。吐き気や嘔吐を伴うため、しばらく苦痛を招くことになりますが、あくまでも「良性」のものであるため、極度に心配する必要はありません。
目次
寝起きのめまいは耳石の移動が原因!
良性発作性めまい症は、内耳にある「三半規管」に異物が入り込むことによって起こります。理科の授業で習ったと思いますが、三半規管には3本の管があり、その中はリンパ液で満たされています。頭の動きによってリンパ液も一緒に動き、その情報が脳に伝わることで私たちは平衡感覚をコントロールしています。
しかし、ここに異物が入り込むと、リンパ液の動きに異常が生じて平衡感覚が乱れてしまい、その信号が脳へ伝わってめまいを起こします。朝の寝起きに現れるグルグルとした「回転性のめまい」は、吐き気(悪心)を伴うことが多いという特徴があるため、嘔吐してしまうことも珍しくありません。
三半規管に入り込む異物のほとんどは、「耳石(じせき)」という小さな石で、およそ1~5ミクロンほどの大きさの「炭酸カルシウムの結晶」です。本来、耳石は耳の奥の「前庭」という部位に存在する「耳石器(頭の動きや重力を感知する器官)」にあり、体の動きに合わせて耳石が動くことで、その情報が正確に脳に伝わります。
しかし、何らかの原因で耳石が剥がれ落ちて三半規管に入ると、リンパ液の流れに異常が生じ、脳に誤った情報が伝わってめまいを起こします。三半規管の中でも、その大半は「後半器官」に入り込むことが多いとされています。
寝起きのめまいは低血圧も関与?
よく「低血圧で朝起きれない」といわれたり、寝起きに立ち上がろうとするとめまいや立ちくらみが生じると訴える人もいますが、基本的には脳への血流が安定していれば、朝起きれなかったり、不快な症状が現れることもありません。
「起立性低血圧」により、めまいや立ちくらみを起こすこともありますが、血圧が低いから起こるのではなく、立ち上がろうとする際に血圧が下がってしまうことが原因です。たとえ高血圧症の人であっても、立ち上がる際には脳への血流が悪くなり、同じような症状が現れることもあります。
「血流の回復が遅れる人」が起立性低血圧を起こしやすいと覚えておくと良いでしょう。
寝起きのめまい・その対策は?
良性発作性頭位めまい症の発作は、数十秒から1、2分、長くても3分以内には治まりますが、何度も繰り返すのが特徴です。女性にやや多く、とくに40歳~60歳代で増える傾向にあります。寝起きだけではなく、家事をしている最中に突然めまいが起こり、吐き気や嘔吐で苦しむ人も多いです。
この病気では、前述したように発作時に「純回旋性の眼振」が見られ、眼球が時計回り、あるいは反時計回りに激しく動いています。耳鼻咽喉科で「眼振検査」を受けると、わずかな目の動きも確認することができます。眼振があれば、ほぼ内耳の異常であるとわかりますし、三半規管のどの位置に耳石が入り込んでいるかを確認することもできます。
めまい、立ちくらみの原因と改善策
耳石の位置が確認できたら、医師が患者さんの頭や首を支えながら前後左右にゆっくり動かして元の位置に戻します。「エプリー法」という頭部を動かす運動が主流です。また、治療には「抗めまい薬」「脳代謝賦活剤」「ビタミン剤」「末梢血流改善剤」などが有効とされています。
とくに抗めまい薬は、内耳の異常な興奮を抑えて症状を緩和するとともに、吐き気や嘔吐を起こす中枢にも働いて症状を鎮める作用があります。
自然に治ることも多い
内耳は、迷路のように複雑な構造をしているため、そのまま「迷路」と呼ばれたり、「内耳迷路」と呼ばれています。三半規管に耳石が入り込むことでめまいが起こるなど、非常にデリケートな部分でもあります。車酔いや船酔いなどの動揺の刺激で、頭痛、吐き気、嘔吐などが起こるのも、リンパ液の流れが関与しています。
しかし、内耳には代償作用としての「慣れの現象」があるといわれています。度々めまいを繰り返していると、やがて症状を感じなくなるのが一般的です。したがって、寝起きにめまいや吐き気が続いていても、1~2週間程度で症状も自然に消失して行くことが多いです。日常生活で積極的にめまい頭位をとり、徐々に慣らしていけば改善も早まります。
もし、それ以上の長期に渡って症状が続いていたり、「耳鳴り」や「難聴」「手足のしびれ」「頭痛」「意識障害」などが現れたりする場合は、他の耳の病気や小脳に異常があるケースも疑われますので、早めに医師に相談しておいた方が良いでしょう。
ちなみに「悪性」の頭位めまいは小脳の障害によって起こるため、慣れの現象がなく、時間が経過しても何度も繰り返し、弱まったり消失することもありません。同じ頭位になるといつまでも継続して症状が現れます。
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