胃潰瘍の原因は胃粘膜を守る防御因子が弱くなること!
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もちろん胃に繋がっている十二指腸にも潰瘍が及ぶ原因と仕組みは、基本的に同じです。しかし、胃壁には「防御因子」の1つである「粘液」を分泌し、胃液に負けないだけの粘膜を作り上げるシステムが備わっているため、特別な原因が存在しない限り、発症することはありません。
目次
胃潰瘍の原因として防御因子の低下が!
胃や十二指腸の粘膜を守る働きを持つものの総称を「防御因子」、逆に胃粘膜を消化してしまう働きを持つものの総称を「攻撃因子」と呼んでいます。後者の場合でも、人間が生きて行くためには必要なものもありますので、両者のバランスが崩れることが胃潰瘍などの原因となります。下記に詳しくまとめておきますので、ぜひ今後の参考にして下さい。
◎防御因子
・粘液
胃の粘膜の表面を覆うために分泌されるもので、強酸性の胃液から胃の粘膜を守り、潰瘍ができるのを阻止する役割を担っています。
・細胞回転
古くなった細胞を、どんどん新しい細胞へと替えて行くシステムのことです。胃の粘膜の抵抗力を付けるために必要なもので、いわゆる胃細胞の新陳代謝という位置付けになります。
・血液循環
上記2つの防御因子を円滑に行うためには、粘膜の血液循環を良好に保ち、組織に栄養や酸素を十分に供給する必要があります。どんな病気でも血流を良くすることは大切なことです。
・プロスタグランディン
胃粘膜が作り出すホルモンの1種。防御機能を調節し統括する、いわば「司令塔」的存在。粘膜や胃酸を中和する重曹の分泌を亢進させたり、血液循環を促す非常に重要な存在。
◎攻撃因子(胃潰瘍の原因を作る存在)
・胃液
食べ物の消化には欠かせないものですが、強力な塩酸やペプチンの働きで胃の粘膜を消化することも。胃炎などの炎症部から消化が始まり、胃潰瘍に繋がるケースも。胃の運動機能亢進が必ずしも良い影響を与えるばかりとは限りません。
・壁細胞の数
胃液を分泌する細胞の数が多ければ、胃の運動が活発になり、消化活動に拍車がかかります。良い意味では、食べ物の消化が良くなりますが、同時に胃壁を傷付けることもあります。
・胆汁の逆流
肝臓で作られた胆汁を8倍まで濃縮する働きを持つ「胆のう」。そこから分泌されるはずの胆汁は、膵臓の消化酵素であるリパーゼの働きを補助する役割があるため、逆流して十二指腸に排出されなくなると、十二指腸への悪影響が心配されます。主に胆石などが関与するケースが…。
※基本的に攻撃因子が強くなっても、防御因子が弱くならなければ、胃潰瘍の原因となることはありません。しかし、両者のバランスが崩れ、攻撃因子だけが強くなると発症する危険性が高まります。そして、このバランスを乱すものがストレスと考えられています。
胃潰瘍の原因は自律神経の乱れ!
胃や十二指腸は、自律神経でコントロールされており、「内蔵神経(交感神経)」と「迷走神経(副交感神経)」により、その働きが支配されています。人間がストレスなどの刺激を受けると、頭部の大脳皮質や辺縁系と呼ばれる部分から、視床下部を経て自律神経へ指令が下ります。
ピロリ菌と胃潰瘍の関係は?
とくに副交換神経が優位に立つと、胃液の分泌が盛んになり、胃の運動もより活発になります。したがって、ストレスが自律神経を狂わせると、胃粘膜の血流が低下するとともに胃液の分泌が亢進して攻撃因子が強くなり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因に繋がるのです。
胃潰瘍にもタイプがある!
胃潰瘍は、発生の仕方や潰瘍の深さなどで「急性潰瘍」「慢性潰瘍」の2つに大別されます。
・急性潰瘍
比較的浅い部分に生じるもので、筋層などに及ぶことがない状態です。非常に出血しやすい特徴がありますが、細胞回転により1週間以内には治ります。主な原因はやはりストレス。会社の倒産やリストラ、家庭内のゴタゴタなど、毎日強い不安や緊張を感じていることで発症する可能性があります。
その他、大量のアルコール摂取が問題となったり、非ステロイド系の鎮痛薬などがプロスタグランディンの生成を抑制してしまうことがあります。
・慢性潰瘍
潰瘍自体は1~2個ほどしかできませんが、固有筋層や漿膜などの深い部分に達するのが問題です。漿膜を破ると、胃壁に孔が開くことになります。主に血管の攣縮(れんしゅく)が起こり、血流の障害が見られます。
筋層まで達しているため、筋肉の再生は難しく、これを補うような組織が作られるまで1~2ヶ月程度を要します。このタイプの再発率が5年間で80%もあることから、ストレスだけでなく、体質やその他の環境要因が関与している疑いがあります。
胃潰瘍の出血量とは?
胃潰瘍は胃壁にえぐれたような傷ができるため、その出血量は胃ガンなどより遥かに多いという特徴があります。胃液と混じって十二指腸・小腸・大腸と、長い道のりを経て最終的に便と一緒に排出されるため、「タール便」というコールタールのようなネバネバとした黒色便が見られることも多くなります。
また、ピロリ菌感染が悪影響している可能性も指摘されていますが、感染者の2%ほどしか潰瘍を発症しないため、必要以上に恐れる心配はありません。ただし、何度も再発を繰り返すようであれば、内服薬を使った除菌が必要となるでしょう。
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